江戸時代に描かれた「尾張名所図会」は、現代の愛知県西部にあたる尾張国の名所や風景、文化を詳細に記録した貴重な資料です。まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような臨場感あふれる記述と美しい挿絵は、私たちを魅了してやみません。この記事では、「尾張名所図会」の基本的な情報から、各巻の見どころ、さらには現代の地図と照らし合わせながら「尾張名所図会」に描かれた場所を訪ねる旅のプランまで、徹底的に解説します。「尾張名所図会」って何?という初心者の方から、もっと深く知りたい歴史ファンの方まで、必ず満足いただける内容です。さらに、古地図アプリの活用法や、関連書籍・博物館情報もご紹介。この記事を読めば、「尾張名所図会」を手に、あなたもすぐに古の尾張を巡る旅に出かけられます!
『尾張名所図会』とは?江戸時代の尾張を知るための”パスポート”
『尾張名所図会』は、江戸時代の人々がどんな場所で、どのように暮らしていたのかを知ることができる、まさに”タイムスリップ・パスポート”のようなものです。ここでは、『尾張名所図会』の概要と、なぜ現代でも価値があるのかを詳しく解説します。
誰が、いつ作ったの?『尾張名所図会』の著者と成立年
『尾張名所図会』は、尾張藩士だった岡田啓(おかだけい、別名:文園(ぶんえん))と、西枇杷島(現在の清須市)で青物問屋を営んでいた野口道直(のぐちみちなお、別名:梅居(ばいきょ))の二人によって作られました。絵は、同じく尾張藩士で画家の小田切春江(おだぎりしゅんこう)たちが担当しています。前半部分(前編)は1844年(天保15年)、後半部分(後編)は1880年(明治13年)に完成しました。長い年月をかけて作られた大作です。
何が書かれているの?『尾張名所図会』の構成と内容
『尾張名所図会』は、全部で13巻あります(前編7巻、後編6巻)。前編では愛知郡、知多郡、海東海西郡を、後編では中島郡、春日井郡、葉栗郡、丹羽郡を取り上げています。それぞれの地域の名所、古いお寺や神社、お祭り、特産物などが、細かく美しい絵と文章で紹介されています。まるで、その場所を実際に訪れているかのような気分になれます。
なぜ重要なの?『尾張名所図会』の歴史的価値
『尾張名所図会』は、単なる観光ガイドではありません。当時の人々の生活、文化、信仰、産業など、様々なことを知ることができる、非常に貴重な歴史資料です。例えば、名古屋城の構造や城下町の様子、熱田神宮の祭り、知多半島の漁業、常滑焼の生産方法など、具体的な記述と絵によって、江戸時代の尾張の姿が目の前に広がります。歴史研究者はもちろん、私たち一般の人々にとっても、過去の日本を知るための貴重な手がかりとなるのです。
『尾張名所図会』前編:名古屋城から知多の海へ!詳細ガイド
『尾張名所図会』前編は、名古屋城を中心とした愛知郡から、知多半島の海辺まで、バラエティ豊かな地域をカバーしています。各巻の見どころを、さらに詳しく、具体的にご紹介します。
愛知郡(1~5巻):名古屋城と城下町の活気を体感!
愛知郡の巻は、まさに名古屋の歴史の中心を旅するような内容です。名古屋城の細部まで描かれた図解や、城下町の賑わいを伝える記述は必見です。
- 名古屋城: 天守閣だけでなく、本丸御殿の内部や庭園の様子まで、詳細に描かれています。例えば、本丸御殿のどの部屋がどんな役割を持っていたのか、庭園にはどんな植物が植えられていたのか、といったことまで知ることができます。現在の名古屋城と見比べてみると、復元された部分とそうでない部分が分かり、より深く理解できます。
- 城下町: 現在の名古屋市の中心部にあたる城下町は、碁盤の目のように区画整理され、商家や武家屋敷、寺社が立ち並んでいました。『尾張名所図会』には、それぞれの店の様子や、そこで売られていた商品、人々の服装などが描かれており、当時の活気を感じることができます。例えば、現在の栄や大須といった繁華街が、当時どのような場所だったのかを知ることもできます。
- 熱田神宮: 熱田神宮は、三種の神器の一つである草薙剣(くさなぎのつるぎ)を祀る神社として、古くから信仰を集めてきました。『尾張名所図会』には、神社の歴史や、毎年行われる祭り(例祭)の様子、境内の建物などが詳しく描かれています。例えば、祭りの際に人々がどのような衣装を着て、どんな出し物が行われたのか、といったことまで知ることができます。
知多郡(6巻):知多半島の海の幸、山の幸を堪能!
知多郡の巻では、知多半島の豊かな自然と、そこで営まれる人々の生活が生き生きと描かれています。海の幸、山の幸、そして独自の産業など、知多半島の魅力を再発見できます。
- 野間埼灯台(野間灯台): 昔、船が安全に航海できるように、高い場所に火を焚いて目印にしていました。それが灯台の始まりです。野間埼灯台は、伊勢湾を行き交う船にとって重要な目印でした。『尾張名所図会』には、灯台の構造や、どのように火を焚いていたのか、といったことが詳しく描かれています。
- 大野湊: 大野湊は、江戸時代に海運の拠点として栄えた港町です。多くの船が出入りし、様々な物資が運び込まれました。『尾張名所図会』には、港の賑わいや、そこで働く人々の様子が描かれています。例えば、どのような船が停泊していたのか、どんな荷物が積み下ろしされていたのか、といったことまで知ることができます。
- 常滑焼: 常滑焼は、日本六古窯の一つに数えられる、歴史ある焼き物です。『尾張名所図会』には、常滑焼の歴史や、土を掘り出すところから、ろくろを回して形を作り、窯で焼くまでの工程が詳しく描かれています。また、どんな種類の焼き物が作られていたのか、どこへ出荷されていたのか、といったことまで知ることができます。
海東郡・海西郡(7巻):水郷地帯の独特な風景と文化に触れる
海東郡・海西郡は、木曽川下流域に広がる水郷地帯です。水とともに生きる人々の暮らしや、独特の風景が描かれています。
- 佐屋川: 佐屋川は、木曽川から分かれて伊勢湾に注ぐ川です。『尾張名所図会』には、川沿いに広がる田園風景や、渡し船で川を渡る人々の様子が描かれています。
- 津島神社: 津島神社は、全国にある津島神社の総本社です。『尾張名所図会』には、神社の歴史や、毎年夏に行われる「尾張津島天王祭」の様子が詳しく描かれています。この祭りは、日本三大川祭りの一つに数えられ、多くの人々で賑わいます。
- 蓮根畑: この地域では、昔から蓮根の栽培が盛んでした。『尾張名所図会』には、広大な蓮根畑の風景や、蓮根を収穫する人々の様子が描かれています。
『尾張名所図会』後編:尾張北部の歴史と文化探訪
『尾張名所図会』後編は、尾張北部、木曽川沿いの地域を中心に、歴史的な出来事の舞台となった場所や、古くから信仰を集める寺社が数多く登場します。
中島郡(1・2巻):木曽川が育んだ豊かな歴史
中島郡の巻では、雄大な木曽川の流れと、その恵みを受けて発展した人々の暮らしが描かれています。
- 木曽川: 木曽川は、日本三大急流の一つに数えられ、古くから水運に利用されてきました。『尾張名所図会』には、川を下る船の様子や、川で漁をする人々の様子が描かれています。
- 起渡船場: 起(おこし)は、木曽川を渡るための渡し船があった場所です。『尾張名所図会』には、渡し船に乗る人々の様子や、船着き場の賑わいが描かれています。
- 墨俣城(一夜城): 墨俣城は、豊臣秀吉が織田信長に仕えていた頃、一夜にして築いたとされる城です(実際には一夜で完成したわけではありません)。『尾張名所図会』には、城の構造や、築城にまつわるエピソードが紹介されています。
春日井郡(3・4巻):自然と歴史が調和する景観
春日井郡の巻では、美しい自然の中にたたずむ古刹や、歴史上の人物ゆかりの地が紹介されています。
- 定光寺: 定光寺は、鎌倉時代に創建された禅寺です。『尾張名所図会』には、山の中に建つ寺の様子や、周辺の美しい自然が描かれています。
- 入鹿池: 入鹿池は、農業用水を確保するために作られた人造湖(ため池)です。『尾張名所図会』には、池の周辺に広がる田園風景や、池で漁をする人々の様子が描かれています。
- 小牧山城: 小牧山城は、織田信長が最初に築いた城として知られています。『尾張名所図会』には、城の構造や、小牧・長久手の戦いに関する記述があります。
葉栗郡(5巻)・丹羽郡(6巻):歴史の舞台を訪ねて
葉栗郡、丹羽郡の巻では、歴史の教科書にも登場するような有名な場所や、古くから信仰を集める神社仏閣が紹介されています。
- 葉栗郡 一宮真清田神社: 真清田神社は、尾張国の一宮(その地域で最も格式の高い神社)です。『尾張名所図会』には、神社の歴史や、毎年春に行われる例祭の様子が詳しく描かれています。
- 丹羽郡 犬山城: 犬山城は、現存する日本最古の天守閣を持つ城として知られています(国宝)。『尾張名所図会』には、城の構造や、城下町の様子が詳細に描かれています。犬山城から眺める木曽川の景色は絶景です。
- 丹羽郡 寂光院: 寂光院は、犬山城の近くにある寺院です。『尾張名所図会』には、寺からの眺望や、境内の様子が描かれています。
『尾張名所図会』と歩く!現代の尾張満喫モデルコース
『尾張名所図会』に描かれた場所を実際に訪ねてみましょう!ここでは、具体的なモデルコースと、古地図アプリの活用法など、旅をさらに楽しむためのヒントをご紹介します。
『尾張名所図会』を手に入れるには?
『尾張名所図会』は、図書館で閲覧できるほか、複製版や現代語訳版が販売されています。
- 図書館で探す: 愛知県図書館や名古屋市鶴舞中央図書館など、大きな図書館には必ずと言っていいほど『尾張名所図会』が所蔵されています。
- 複製版・現代語訳版を購入する: 書店やインターネット通販で、複製版や現代語訳版を購入することができます。現代語訳版は、初心者にも読みやすくおすすめです。
- デジタルアーカイブを利用する: 一部の図書館や博物館では、『尾張名所図会』をデジタル化して公開しています。インターネット上で閲覧できるので、手軽に利用できます。
モデルコース(1):名古屋城とその周辺を満喫!
名古屋城とその周辺は、『尾張名所図会』にも詳しく描かれており、見どころ満載です!
- 名古屋城: 『尾張名所図会』の記述と見比べながら、復元された天守閣や本丸御殿を見学しましょう。特に、本丸御殿の内部は、当時の様子が忠実に再現されており、必見です。
- 名古屋城周辺の散策: 『尾張名所図会』には、城下町の様子も詳しく描かれています。現在の地図と見比べながら、当時の面影を探してみましょう。
- 熱田神宮: 熱田神宮も、『尾張名所図会』に登場する重要なスポットです。広大な境内を散策し、歴史の重みを感じてみましょう。
モデルコース(2):知多半島、海と歴史の旅
知多半島は、『尾張名所図会』前編の6巻で紹介されています。海沿いの風景や、常滑焼の里を訪ねるコースがおすすめです。
- 野間灯台: 現在も残る野間灯台を訪れ、『尾張名所図会』に描かれた当時の姿を想像してみましょう。
- 常滑焼散歩道: 常滑焼の窯元や工房が立ち並ぶ「やきもの散歩道」を歩き、『尾張名所図会』に描かれた常滑焼の歴史に触れてみましょう。
- 大野湊: 大野湊は、現在は漁港として賑わっています。『尾張名所図会』に描かれた、かつての港町の面影を探してみましょう。
古地図アプリで、さらにディープな旅を!
スマートフォンやタブレットで利用できる古地図アプリを活用すれば、『尾張名所図会』の旅がさらに楽しくなります!
- 地図の重ね合わせ: 多くの古地図アプリでは、現代の地図と古地図を重ねて表示することができます。『尾張名所図会』の地図と現代の地図を比較することで、地形の変化や、道がどのように変わったのかなどを確認できます。
- GPS機能: GPS機能をオンにすれば、自分が今いる場所が古地図上に表示されます。『尾張名所図会』に描かれた場所を訪れる際に、非常に便利です。
- おすすめアプリ: 「大江戸今昔めぐり」、「古地図散歩」など、様々な古地図アプリがあります。自分の目的に合ったアプリを選びましょう。
Q&Aで解決!『尾張名所図会』の疑問
ここでは、『尾張名所図会』についてよくある質問にお答えします。
Q1: 『尾張名所図会』はどこで見ることができますか?
A1: 大きな図書館(愛知県図書館、名古屋市鶴舞中央図書館など)で閲覧できます。また、複製版や現代語訳版が販売されているほか、デジタルアーカイブで公開されている場合もあります。
Q2: 『尾張名所図会』は難しい言葉が多くて読みにくいのですが…
A2: 現代語訳版がおすすめです。原文の雰囲気を残しつつ、現代の言葉で分かりやすく解説されています。
Q3: 『尾張名所図会』に描かれた場所は、今でも全部残っていますか?
A3: 残っている場所もあれば、残念ながら失われてしまった場所もあります。しかし、多くの場合、その場所には何らかの形で歴史の痕跡が残っています。
Q4: 『尾張名所図会』の絵は誰が描いたのですか?
A4: 尾張藩士で画家の小田切春江らが担当しました。
Q5: 『尾張名所図会』をもっと深く知るためには、どうすれば良いですか?
A5: 『尾張名所図会』に関する研究書や解説書を読む、関連する博物館や資料館を訪れる、といった方法があります。
まとめ
『尾張名所図会』は、江戸時代の尾張の姿を現代に伝える、貴重な歴史資料であり、魅力的な観光ガイドでもあります。この記事では、『尾張名所図会』の基本的な情報から、各巻の見どころ、現代の地図と照らし合わせた旅のプラン、さらには古地図アプリの活用法まで、幅広く解説しました。『尾張名所図会』を片手に、ぜひ古の尾張を巡る旅に出かけてみてください。きっと、新たな発見と感動が待っているはずです。そして、この貴重な資料を、未来へと伝えていきましょう。